いま何故、過渡的要求なのか(承前)
プロレタリア統一戦線―共同戦線と社民内分派闘争路線

                    角 行成

一、二〇〇三年総選挙――その諸結果に現われたもの

二、社民内分派闘争路線の総括

三、いかなる展望をもってこの過程にかかわっていくのか
  ――共同戦線の大胆な推進、そのための過渡的要求

(以上、前号)           

四、われわれの過渡的要求

@過渡的要求――その概略

「一人一人の自由な発展が、全ての人々の自由な発展にとっての条件である」協力体(共同社会)の形成のために

【三つの原則】

●第一。協同労働――自分たちの共同による自分たちの労働の支配
●第二。連帯社会――国家へと疎外された共同の力を社会の下に取り戻す
●第三。国際連帯――
 
「私人の関係を支配すべき道徳と正義の単純な法則を諸国民間の至高の原則として貫徹する」

 諸々の改良的課題について、この原則的観点に照らし出して、この道を進めるのか否かとして賛否を決する。問題は、二重に立てられる。その要求の獲得物自身とともにその獲得物によって人々の政治化が促されるのか保守化が促されるのかである。
 どこまでも発展するプロレタリアの団結がこの要求の背後にたっている。しかしそれは必ずしも直線的に発展を続けるというものではないことを階級闘争の一進一退として経験させられてきた。その階級闘争の現段階にふまえつつそれを固定するのではなくて次の新しい段階を切り拓いていくような要求こそが、団結の成長・発展を促す。

 市場とは競争の別名である。「競争に代えて団結を!」の意義をもう一度復活させていかなければならないが、そのためには、形骸化した「団結」の生み直し、個の埋没ではない、個の自立によって初めて成立する「生き生きとした団結」の現実性と力こそが大事である。

 「自己決定権」がキーワードとして運動のなかで主張される場面が多くなった。それ自身は運動の前進であろう。しかし我々は、「自由の外観を通して貫徹される」「自律の外観を通した他律」ということを一貫して問題提起してきた。このことは現在でも忘れてはならない視点である。

 「自由な労働」という外観のもとでより複雑で巧妙となっている現代的雇用形態の本質はあくまでも賃金奴隷制である。
 賃金奴隷制の廃止は、すべての隷属的諸関係はたんにこの関係の変容であり帰結であるにすぎないものとして根源的課題でありつづけている。その現実性を過渡的にいかに実践的に示し得るかが重要になっているのである。

「社会運動」「社会革命」の意義が左翼のなかで共有されるようになってきた。
しかし、我々が同時に提起してきた「社会的権力」という視点は希薄であるし、また、「二重権力的団結」の意義も忘れられている。「二重権力的団結」の今日的あり方を解明することが必要である。

●第一について。
 ――生産協同組合の推進ととりわけ労働組合の社会的権威の回復
・週三五時間労働制/サービス残業の厳罰化/食うことの出来る地域最低賃金の確立
・労働者の働く権利(とりわけ障害者、外国人労働者に留意)、労働三権
・協同労働の権利と法制度の確立
・働きながら学ぶことの出来る教育制度

●第二について。
 ――家族主義でもなく公共主義でもない連帯社会の形成
・憲法第七条=天皇の国事行為条項の廃止から天皇制の廃止へ
・国民投票制の導入
・違憲立法審査制度の拡充(法治主義の徹底)/司法制度・司法教育の改革
・自衛隊の災害対策を主たる任務とする組織への転換/消防職員、警察官、自衛隊員の団結権
・累進課税の直接税を中心とした単純で透明な税制度
・民衆自身による自治と相互扶助の強化
・差別禁止のための法制度的担保

●第三について。
・民衆レベルでの「東アジア共同の家」の推進
 ――日米同盟から東北アジアにおける国際的信頼関係の醸成措置への転換
・在日米軍基地撤去
・自衛隊の海外活動の全面禁止――国際社会との非軍事的協力
・出入国管理の開放 1、国境往来の自由/2、外国人の居住の自由/3、外国人の政治活動の自由
・国際協力において、教育分野の集中的推進

●他の諸政党・政治団体の関係
・反自民連合政府から労働者政府樹立へ

A深化していくべき課題

 現実的諸課題を巡る実際的運動との結びつきのなかで個別の領域についての現段階的要求を深化していくべきであるが、いくつかのポイントを列挙して、議論を惹起したい。

*電網化によって、金融市場は新段階を迎えようとしている。それは、一挙にグローバルな流動化を引き起こすことで新しい「危機」も醸成している。
 他方では、「電子政府」、「電子自治体」として進行している、「情報化社会」。
 旧来社会から、何を遺産として引継ぎ、なにを廃絶していくのか。

*地方自治の強化について
 社会として自立し得る単位としての基礎自治体という構想。しかし、地域間の再配分機能を全く留意しなくていいわけではない。しかし、それは根本的には社会の「自立と連帯」に基くものであって、超然たる政治権力に基くものではない。裁量権が再び権力を強化していくということがないように、明示的な基準にもとづく再分配の制度が必要だろう。
 いわゆる規制を巡っては、「事前規制」では審査は「形式」主義であり「既得権益化」に陥りやすい。規制緩和は「事後取締」を必要とするのであって必ずしも小さな政府に直結するわけではない。しかし「事後」は「内容」を取締ることになり「形式」の壁は薄くなる。

*沖縄問題について

*労働をめぐって
 労働市場の新しい流動化!――これに対応(対抗)した労働組合の機能・形態
 ――いかなる労働組合が求められているのか、そのための法制度的担保。

*生活分野で
・環境問題、脱原発、安易な生物工学、遺伝子工学産業の禁止、農薬・薬物の厳格な認可制
・社会福祉――連帯社会をいかに形成していくかが根本問題であって、公的分野での安易な「補助」は自立への道ではない。
・年金制度について――現役時代の格差は公的に維持すべきことではない。

             (2004・6・24)