「解放の通信」編集委員会 |
全世界の病める都市と沈み行く農村の底辺から、新たな人間的社会を予感させる多くの人々の営みが生み出されている。それは、極度に発達した世界資本主義のとどめを知らぬ破壊作用に抗する全世界的な営為として現実に前進している。運動が国境を越えて結び合わされることが進むためには、人間の生き生きとした輝きが未来を照らすように衝撃力をもった推進力が必要となっている。「ベルリンの壁の崩壊」は、現代の人間の苦悩を象徴的に突き出している。かってのロシア革命は、労働者の革命として全世界の労働者に光となって輝いた。「ベルリンの壁の崩壊」という事件は、先進国革命の遅れと、スターリン主義の限界という大きく二つの要因が覆い被さったところの、大衆の絶望的エネルギーの奔流の頂点的事件として全世界に衝撃的に伝わった。「ニューヨークテロ」は、アラブにおいて資本主義と共産主義にかわる第三の方途とされたイスラム原理主義の絶望的疎外が凝結したものである。
この二つの事件に、現代における歴史変革の一切の問題と困難さが凝集している。 「ソ連圏」の崩壊は、歴史の変革の道程においていかなるものとして捉えられるべきものなのか。単純に肯定的にも単純に否定的にも捕まえきれないと皆実感してきた。この事態に対して、部分的な一面的評価を多く並べるようなことでは何の力にもならない。それでは全的に受け止めるということはどういうことなのか? われわれは、一九六〇年代前半から、永続革命ということを世界革命の過程的内容として掴んできた。すなわち、ロシア革命を端緒とする後進国革命の爆発から先進国革命を経て、後進国革命のもつ制約性を先進国革命の質に於いて止揚しながら一つの世界革命として進む全過程を永続革命として掴んだ。 ロシア革命の成立以降、敵の密集を国際反革命階級同盟として対象的現実として生み出し<永続革命第二段階前期>、それに対抗するものとして、先進国同時革命が現実的に問題となる段階としての<永続革命第二段階後期>へ過渡の時代として現代を規定してきた。ロシア革命の中に輝いた労働者の革命的団結は、自称前衛の「共産党」にその真の主人公としての位置を簒奪され、解体されて消し去られ、隷属させられた。レーニン主義、スターリン主義が現代のマルクス主義と喧伝され、共産主義運動が全くゆがめられて人間の解放に敵対する抑圧的体制となって聳え立つものに堕落し、人々を苦しめてきた。これは、ソ連圏内部のみならず、全世界の人民に作用した。中ソの輸出しようとした「社会主義・共産主義」は、貧困にあえぐ人々にとっては、再び絶望を結果する対象としてしか現れなかった。イスラム原理主義は、否定的事態のまた否定的結果としての歴史的疎外態である。 スターリン主義を超えるとした日本、欧米の新左翼は、再び多くがレーニン主義的限界のなかにあるか、その限界を、ブルジョア的民主主義によってただ補完するという類の折衷的理論のまま、「疎外された前衛」として又も古くなってしまった。これらの中間諸潮流には、現在の国際階級闘争の現段階を段階として掴もうという問題意識さえない。 われわれは、今日の否定的事態、永続革命「第二段階中期」の出現を目の当たりにしている。この「中期」の階級的解明の中に、これまでの根底的な歴史的反省と、真実の共産主義=マルクス主義の復活の課題がある。自らの解放と全人類の解放が一つのものとならざるを得ない労働者にとっては、このように全過程を沈められてきた労働者の自立と団結に照らして反省的に総括し、堀下げ、新たな展望を立てる作業を不可欠とする。ここまできて、偽物の「マルクス主義」や「革命理論」をつかまされるわけにはもういかないのであるから。 この「第二段階中期」の階級的反省的掘り下げは、同時に、解放派のこれまでの理論の深化再生を要求する。「革命期規定」以降の過程で、一部に「レーニン主義回帰派」を生み出した。労働者階級の外に作り出された性格をもった「革命目的」の担い手としての党というたぐいの主意主義的目的主義の本来持つところの堕落は、当然にも、目的のためには手段を選ばずとなり、プロレタリアートの築き上げる同志的連帯からはるかに逸脱するかたちで、政治的自己保身のための「スパイ問題の政治的利用」に手を染めるグループによる組織破壊過程を生み出した。そしてまた「権力の手先」「反革命」という規定のもと、戦う労働者メンバーへの襲撃を繰り返したのである。 この主体的総括と、階級的歴史的反省を統一して再出発することがわれわれに課せられた課題である。解放派は一九八〇年に分裂した。レーニン主義への回帰が同時にスターリン主義への堕落と一つになった部分が、組織を破壊した。これを克服するには時間がかかる過程を必要とした。組織の中枢に発生した腐敗は組織に解体的に作用したからである。われわれは一部のスターリン主義に転落した部分と分かれて、「協議と共同行動」を軸に全協運動を推進してきている。また、多くの同士の各地各戦線での戦いが進められている。 出発以来、解放派は、「共産主義者通信委員会」から、「社会党革命同志会」、「革労協(社会党・社青同解放派)」、「全国社青同」まで多重に構成されてきた。個々の組織実態を超えて、解放派としてのマルクス主義の地平を築き上げてきた。解放派マルクス主義の再生深化の理論作業を進めるための場を作ることを願ってきた。「滝口弘人著作集」は、「共産主義者通信員会」をも射程に入れて編集され、その成果として昨年3巻本が刊行された。この地平をふまえ、解放派マルクス主義の再生深化の理論作業を進めるための場が必要であると考える。多くの同志の問題意識を糾合する場として、@理論的深化のためにA現状分析のためにB中間諸潮流の理論的批判のためにという三つの課題に限定した理論作業・討論の場として「解放の通信」を創刊することにした。これによって直接の組織体を目指すものではない。如何なる組織が現在の階級情勢において必要であるのか、そのことを含めて討論する必要があると考えるからである。 これまで培ってきた解放派の永続革命=世界革命論、レーニン主義批判、コミューン論の発展を願う同志の活発な討論を進めたい。 共産主義=マルクス主義の旗を高々と掲げよう! 労働者階級自身の永続革命=世界革命の道を照らし出そう! 万国の労働者の団結のために戦おう! <文責 斎藤> |